第一章
 
         ←ここでは断絶不可→ 
         ↑   勁の加速 →   ↑
  関節の折畳部              関節の折畳部
         ↓  ← 勁の加速   ↓ 
          ←ここでは断絶不可→


             図7 纏絲には途切れが無いこと


 上記三項を総合的にみると、纏絲の過程、つまり運勁の過程においては欠けや凹凸・断絶といった事が発生してはならない。もしこの3つのうち1つでも問題が発生した場合、纏絲勁はそのあるべき作用を発揮することができなくなる為、学習の際には肝に銘じておかなければならない。

   以下に要点をまとめる。

(1)纏絲勁は太極拳という名前の由来である。纏絲勁がなければ勁を四肢にめぐらせて節々を上昇させていくことができず、全体が整った動作を一瞬にして完成させるということが不可能となる。

(2)“貫く”ということを理解すること。関節部分だけでなく、その関節の上下の筋肉部分をも動員して勁を運用する。これは螺旋纏絲の作用である。

(3)太極拳は一対の基本纏絲と五対の方位纏絲があり、これは太極拳を教える、或いは学ぶ際には非常に便利な道具となる。

(4)勁の運用は纏絲のように、というのは軽妙かつ身体の中を貫くものがあって初めて実現する。同時に、神と気においてもうねりと内収が必要である。

(5)纏絲勁の運用にあたっては欠損、凹凸、断絶という3つの欠点があってはならない。

特徴四 立身中正、上下相随している虚実の運動

 拳譜の規定:
(1) 意と気の変換は素早く、丸くスムーズであり、虚実の変化に関して心を配るべきである。

(2) 虚実は明確に分ける。全ての場所において虚があれば実がある。

(3) “身体を立てる際には中正かつ程よくリラックスしていて据わりがよく、八方の面を支える“;”上下がお互いに連動し従い合えば敵が侵入するのは難しい“。

(4) “尾閭が正中で神が頭頂部を貫く”、“上下一直線”

 上記4つの規定から、太極拳の全ての動作は必ず虚と実を明確に分けなければならないということが説明可能である。虚実を明確にしながら転換をすることにより長時間疲労せずに動くことができるため、もっとも経済的な運動といえる。よって、太極拳を練習する際には両方の手に虚実があると同時に両足にも虚実があり、特に重要なのは左手と左足、右手と右足が上下に相い随い虚と実を分かれていることである。

 具体的には左手が実の場合は左足が虚、右手が虚の場合は右足が実である。これは内勁を調整することによって中正をキープさせることの核心部分である。この他、動作の終わりを形成するポイントの虚の中に実が、実の中に虚があり、それらによって全てが一虚一実かつ内勁が中正で偏りがない状態が実現する。初期の段階では虚と実を大きく動作に反映させてもよいが、その後の練習では少しづつ虚実を小さくしていき、最後には虚実が内部にはあるが外側からは見えない境地に達する。この最終段階が虚実が整えられたもっとも深い功夫といえるものである。

 虚実を素早く転換させる為に最も重要となるのは意と気の転換である。同時に“中土不離位”(①:人体の重心が両足を結んだ線上を3分割した際の中間1/3の範囲から出ないという意味。図9参照。)および内勁の中正ができて初めて完成する。よって、練習の時には必ず“尾閭正中”,”程よくリラックスして8つの面を支える”、“虛領頂勁”,”上下一直線”の状態で随時虚実の調整を行う。つまり立身中正や上下相随をしつつ虚実の調整を行うのが太極拳の4つ目の特徴である。

 
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